専門家コラム

第8回/本物の笑顔~リーダーシップの本質

心理セラピスト・パーソナルコーチ

鐘ヶ江 ゆき

KANEGAE YUKI

第8回/本物の笑顔~リーダーシップの本質

2014/06/15

人は、笑顔を見るとほっとします。
心理学の研究でも、
わたしたちが深い所で求めているものの原型は、
母親の笑顔だと言われています。

「お母さんの笑顔が見たい一心でやったこと」
から才能が開花することもありますから、
笑顔の影響力の大きさを改めて感じます。

わたしは仕事がら、その方の問題をうかがう場面が多いです。
苦しかったこと、誰にも話せずにいたことを、
涙とともに話される方もいらっしゃいます。

涙をこらえて言葉につまる方も、
人前で涙を流すことに対して
何度も「ごめんなさい」とおっしゃる方も多いです。

そんな時わたしは、ただただその思いを受け止めます。
悲しいときに無理して笑う必要なんて、どこにもないからです。

そして、たとえ今、目の前の人が泣いていたとしても、わたしには見えるのです。
その方が本当に輝いたときの、本物の笑顔が。

わたしがあえて「本物の」と言うのには、わけがあります。
わたし自身、悲しい時ほど笑顔でいようと頑張った経験があるからです。

わたしの母は、明るくてよく笑う人でした。
5人の子供を豪快に育て、まさに家族の太陽。
めったに怒らないけど、
怒ったら口をきいてくれなくて、それが一番怖かったです。

そんな母は、わたしが13才のときに突然亡くなりました。
元気だった母が急に倒れ、3日後に息を引き取りました。
急性白血病と診断されました。

わたしは思ったのです。
母はいつも笑っていたけど、
もしかしたら身体はあちこち悲鳴をあげていたのではないだろうか?
苦しかったのに、わたしたちのために無理をしたんじゃないだろうか?
来る日も来る日も、わたしは泣きつづけました。

こんなに悲しいのに、また朝はきて、世界は回っているし、おなかだって空く。
みんな心配している。泣いてばかりはいられないんだ。

それから、わたしは悲しい時ほど笑顔でいようと決めました。
わたしが笑顔になると、周りはほっとしてくれました。
そして、少しずつ少しずつ日常に戻っていくのを助けてくれました。
それが、その時のわたしにとって生き延びる手段でした。

ただし、これは非常手段です。
顔は笑って心で泣いて…を日常的に使っていると、心は破たんします。

たった一人でいい。
本当の気持ちをありのまま受け止めてもらえたとき、人は救われます。


その時、心の底から本物の笑顔が湧いてくるのです。

幸せのリーダーシップ
笑顔のリーダーシップ
この言葉は本当だと思います。

わたしが泣き続けていると、みんな悲しそう。
わたしが笑顔になると、みんな安心する。

自分自身が悲しみの中心にもなれば、
喜びの中心にもなる
ことを、
わたしは身をもって体験しました。

でも、リーダーシップの本質は決して
「いつも笑顔でいなければならない」という表面的なものではありません。

母が見せてくれた、苦しみを一切見せずに笑顔で生き切った人生。
それは、母の美学なのだと理解するのに、ずいぶんと時間がかかってしまいました。

だからわたしは、今の自分に正直に生きたいと思うのです。
今この瞬間、自分が感じていることをごまかさないこと。

嬉しいときも悲しいときも、その感情に向き合い、素直に表現すること。
表面的ではない、あなたの「本物の笑顔」は、周囲の人をどれだけ勇気づけることでしょう。
身体の力を抜いて、自然と湧いてくる笑顔、どうか大切にしてくださいね。

鐘ヶ江 ゆき プロフィール

ハードワークによる燃え尽きと失恋をきっかけに、2009年より本格的に心理学を学び始める。豊かな感受性と共感力を活かしたセラピーには定評があり、約2年間で900件以上のカウンセリング実績を持つ。人と接するときのこだわりは、「どんな時も、その人の真の光を見出す味方であり続けること。」自分の”まんなか”をフルに生きたいあなたを、過去の感情を解放する心理療法と、人が本来持っている力を引き出すコーチング技術を用いて、癒しと成長の両面からサポートします。