専門家コラム

第14回/本音のコミュニケーション

心理セラピスト・パーソナルコーチ

鐘ヶ江 ゆき

KANEGAE YUKI

第14回/本音のコミュニケーション

2014/12/15

「本音とタテマエ」という言葉があるように、日本人のコミュニケーションは何層にもなっている文化的背景があります。

以前、日本語教師をしていたとき、外国人の学生たちが一番難色を示すのが、この「タテマエ」を理解することでした。

表向きは型通りのことを伝え、その奥にある思いは言わないけど察しろという文化は、確かに複雑で難解です。 どうして、本当のことを言わないんですか?

日本人は嘘つきですね。
と、何度学生に言われたことか(笑)。

タテマエが全く不要だとは思いませんが、本音を語り合うことが求められる時代になったなぁと感じています。
そしてまた、本音を伝えることができたら、ストレスの大半は解決するのではないかとも感じます。

そういうわたしも、本音のコミュニケーションを練習中です。

つい先日も、親しい人との会話の中でちょっとした口論になりました。
相手はとてもはっきりと意見を述べる、まさに本音の人。今までのわたしは、場の空気を読んで、相手に合わせることが多かったのですが、この人とは本音のつきあいをしたいと思って話していた矢先のことでした。

きっかけは些細な意見の相違。相手にとって、とても思い入れのあるものに対して、わたしの感覚が違ったのです。

思ったことを述べただけなのに、相手が急に不機嫌さをあらわにしたことに驚きました。
今までのわたしなら、相手の機嫌をとろうとしていたと思いますが、自分が感じたことに嘘はつけません。
「お互いに違う感性を持った人間である」という事実を認めるだけのことが、正しさの主張になってしまうことがあります。

少し時間が経って、自分は本音のコミュニケーションをしていただろうか?と振り返りました。
相手が不機嫌になったのは「あなたなら理解してくれると思ったのに!」という理解されない悲しさだったと思います。

わたしは、その奥にある思いよりも、表面的な不機嫌さのほうに反応してしまいました。

だって、わたしだって同じ気持ちだったのです。
「わたしは、こんなことで言い争いたいのではない。あなたと理解し合いたい。」その本音をその時に伝えることはできませんでした。

じゃぁタテマエを言っていれば、それでよかったのかというと、そうとも思えません。
理解されないと感じた傷からの反応に気づくことができたのは、本音を伝えようとチャレンジしたからこそなのです。

そしてこの一連の経験を、また次に活かしていこうと思える自分がいます。

人の本音=本当の思いが、「目の前の相手を言い負かしたい!」ということはあり得ない、とわたしは思います。
それは単に、過去の傷を守るための反射的な反応です。そして、これは傷はあなたそのものではありません。
本音を突き詰めていくと、実は自分も相手も一つなのではないかと思います。
「理解し合いたい。助け合いたい。愛し合いたい。」その本音が伝えられないとき、伝えることをあきらめてしまったとき、わたしたちは苦しみます。

イヤなものはイヤ。好きなものは好き。できないことはできない。嘘はつけない。自分の本当の思いを大切にする。それでいいのです。

その本音を相手に伝える意図はなんでしょう?決して、自分が優位に立つためではないとわたしは思うのです。

本音のコミュニケーション、みなさんもチャレンジしてみませんか?


 

鐘ヶ江 ゆき プロフィール

ハードワークによる燃え尽きと失恋をきっかけに、2009年より本格的に心理学を学び始める。豊かな感受性と共感力を活かしたセラピーには定評があり、約2年間で900件以上のカウンセリング実績を持つ。人と接するときのこだわりは、「どんな時も、その人の真の光を見出す味方であり続けること。」自分の”まんなか”をフルに生きたいあなたを、過去の感情を解放する心理療法と、人が本来持っている力を引き出すコーチング技術を用いて、癒しと成長の両面からサポートします。